ブラックホールの周辺領域ほど激しく神秘的な場所はありません。このような領域で起こっている興味深い現象を解くヒントを得るために、観測により得られた豊富だが謎に満ちたデータが蓄積されています。

物質がブラックホールに向かって落下するに伴ってX線を放射するほど高温になり、異常な影響をX線放射に残します。35年以上に渡る研究から、ほとんどのブラックホールはX線のフレアと脈動の様子によって4つのタイプに分けられることが明らかになっています。これらの光度と継続時間における違いは、ブラックホールのサイズ、回転速度、質量降着率、そして、おそらくその他の未知の原因によっています。

変光星わし座V1487として知られるGRS 1915+105は、太陽のおよそ14倍の重さのブラックホールの周りをオレンジ色のK型巨星が公転している天体です。この巨星は、マイクロクエーサーになるのに十分なガスをブラックホールに注ぎ込みます。このブラックホールは断続的なジェットを極方向に光速の98%のスピードで放出しており、周辺物質は典型的に数秒から数時間継続する10種類以上のX線信号を示します。

特にジェット全体のオン/オフが高速に切り替わる、「ハートビート(鼓動)」と呼ばれているパターンが独特です。降着円盤の内側が強力な円盤風が発生するほど成長して高温になると、円盤へ物質が降着できなくなりジェットが止まります。さらに成長し温度が上がると、円盤の内側が崩壊してブラックホールに落ち込み円盤風が止まって、ジェットが再び形成されます。このサイクルが時には40秒間隔で繰り返されます。

この「ハートビート」はこれまでGRS 1915+105特有のものでしたが、現在では二つめの系が見つかっています。さそり座のIGR J17091-3624はGRS 1915+105と同様ですがより早いサイクルのX線信号を示します。ハートビートは早い時で5秒間隔のサイクルで発生します。原因として最も有望な説は、ブラックホールの質量が太陽の3倍程度しか無く、それに応じてすべてがスケールダウンしているというものです。

太陽の3倍は、ブラックホールになる最小質量とブラックホールになれなかった中性子星の理論的な境界となる質量です。
  • "Smallest Black Hole", Sky and Telescope誌 2012年4月号

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