水素は宇宙で飛び抜けて存在量が多い元素です。 地球上では水素分子(H2)が中心ですが、宇宙空間では多くが単一の水素原子(H)として存在しています。 H2 のほとんどは、低温(-260 ° C)で密度が高く紫外線からも守られている星間ガス雲の内部でのみ存在しています。
このようなH2 が高温の太陽から検出され、太陽黒点の形成と維持に一役買っていることが、ハワイ大学とアメリカ国立太陽観測所の共同チームの観測から明らかになりました。
Sarah Jaeggliの研究チームは、国立太陽観測所のDunn太陽望遠鏡(ニューメキシコ州)を用いて23個の黒点領域を観測しました。 その結果、低温な太陽黒点暗部では水素元素の2.3%がH2 の形態で存在していることが示されました。
黒点は磁力線の束が太陽内部から出現する領域です。 磁場がイオン(電離)ガスを閉じ込め太陽表層の熱対流から守るため、周囲より低温になり黒点として観測されます。 そのような領域では、H2 を形成される可能性が生じます。
研究チームはまた、H2 の形成は急速な磁場の増加を引き起こし、黒点を小さく長持ちさせると主張しています。 二つの水素原子が一つの分子に置き換わることにより、黒点内部のガス圧が下がり収縮します。 磁力線も収縮するガスに引きずられて密になり、磁場がさらに強くなるのです。
太陽にH2 が存在するということは、太陽黒点がなぜコンパクトに保たれ寿命が長いのかという謎をとく重要なヒントとなり、ひいては、太陽フレアや地球環境における宇宙天気の予報技術の進歩に貢献する可能性もあります。
  • "An Unexpected Secret of Sunspots" Sky and Telescope誌, 2012年5月

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