昨年12月、二つの超巨大ブラックホールの発見が世界的なニュースになりました。発見されたのは、これまでに直接的な手法で測定されたものの中で最も巨大なブラックホールである可能性があります。

二つのブラックホールは、それぞれ「しし座銀河団」と「かみのけ座銀河団」の核をなす巨大楕円銀河NGC 3842およびNGC 4889の中心部にあります。カリフォルニア大学バークレイ校のNicholas McConnellとChung-Pei Maが率いるチームは、ハワイのジェミニ望遠鏡(北天)、およびケックII望遠鏡を用いて、これらの銀河最深部の回転速度を測定しました。これによって、銀河中心の光を発しないブラックホールの重力の強さを明らかにし、その質量を求めました。計測されたブラックホールの質量は、NGC 3842では太陽の(100 ± 30)億倍、NGC 4889では(215 ± 155)億倍でした。これまでのチャンピオンはおとめ座銀河団の中心メンバーM87で、2011年の研究では、その質量は太陽の(66 ± 4)億倍と計測されています。新たな二つの巨大ブラックホールはM87より数倍大きい可能性があります。

ただし、発見した研究チームが12/8のNature紙に掲載された論文で明記しているように質量の測定誤差は大きく、その最低値を取るとM87と同程度の質量に落ち着くことにも注意が必要です。新しい計測結果はM87に比べて、明らかに誤差が大きいことがわかります。原因は、二つのブラックホールがM87より五倍遠い3億光年の彼方にあることにあります。この距離は、現在の技術で銀河中心天体の周囲を回るガスや星を用いて質量を測ることができるギリギリの距離です。今回のスペクトル計測では、銀河中心から約1000光年の範囲の星からの光が重なりあっており、誤差を大きくしているのです。

しし座とかみのけ座は春の星座、今が見やすい季節です。3億光年彼方に潜むモンスターに重いを馳せながら眺めてみてはいかがでしょうか。
  •  'Super Black Holes: New Records, if Real' Sky & Telescope誌 2012/03

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