変身物語 オウィディウス
古代ローマの詩人オウィディウス(前43-後18)によって、今からおよそ2000年前に著されたギリシャ・ローマ神話の集大成です。全15巻に250もの物語が含まれています。ローマ神話固有の部分としては、ラテン語で記述されている点、ローマの創始者ロムルスや帝政を布いたカエサルを神格化するくだり、イタリアにあるギリシャの植民地クロトンにすんでいたピタゴラスに関する記述のみです。ローマの人々がギリシャ神話をほとんどそのまま取り込んでいたことがうかがえます。
変身物語というタイトルは、神とかかわりを持った人々が動物や植物、岩などに姿を変えられる話を集めていることから由来しています。もとはバラバラであったであろう逸話を巧みにつなぎ合わせひとつの物語としてまとめ上げてられています。白鳥、猿、カエルやかわせみほか、さまざまな動物の由来となる変身に関する物語が収められています。
変身させられる理由はほとんどが理不尽で、たとえば全能の神ゼウスによって無理やり愛人にさせられた女性が、ゼウスの正妻ヘラの嫉妬から変身させられてしまうパターンが多くみられます。つねづねギリシャの神様は心が狭いなあと思っていましたが、自然を司る神に対する畏敬の念が根底にあるのでしょう。
二千年前の書物でありながら、その豊かな表現力に感嘆させられます。星座やギリシャ神話に興味のある方にはお薦めの二冊です。
文中の神々はローマ名で記述されています。主なギリシャ神との対応は以下の通りです。
ゼウス -> ユピテル
ヘラ -> ユノー
アプロディテ -> ウェヌス
アテナ -> ミネルバ
アルテミス -> ディアナ
ポセイドン -> ネプトゥーヌス
ヘルメス -> メルクリウス
デメテル -> ケレス
エロス -> クピード
ローマの言葉「ラテン語」は英語の元になった言語のため、惑星や衛星などに使われている英語表記とギリシャの神々との対応を類推することができるのも面白いです。