宇宙には、秒速数百キロ以上という速度で移動する「超高速度星(hypervelocity star)」と呼ばれる星が存在します。そのような天体が発見されてわずか5年、現在までに約18個の超高速度星が発見されています。これらは、いずれ銀河系を飛び出し、銀河と銀河の間の空間を永遠にさまようことになるでしょう。そのような超高速度になりえるのは、銀河系内の1億個に一つの星だけです。超高速度星の発見は、近年の高い精度での探査によって可能になりました。

星をそのような高速で放り出すメカニズムはいくつか提唱されていますが、最も信憑性の高い説は、非常に特別な場所で起こる現象によるものです。二重星が銀河系中心に存在する超大型ブラックホールに近付き、 片方の星がブラックホールに捕まって二重星が分離すると、他方の星が超高速で放り出されるというわけです。現在見つかっている18個の超高速度星のうちほとんどがこのメカニズムで説明できると考えられています。


超高速度星'HE 0437-5439'は、既に20万光年の彼方、大マゼラン雲の近くにあります。天文学者のなかには、星の科学組成から銀河系ではなく、大マゼラン雲から来たのではないかという人たちもいます。しかしWarren Brown(Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)の率いるグループによる星の固有運動の計測によって、そのような説は否定されました。3.5年間隔で取得されたハッブル望遠鏡による高分解能撮像によって、この星が大マゼラン雲ではなく、射手座の銀河系中心からやってきたことが示されたのです。


HE 0437-5439は秒速723キロ(時速260万キロ)の超スピードで太陽から遠ざかっています。それでも、現在の位置にやってくるには1億年ほどかかる計算になります。


これは少々厄介な問題があることを示しています。星のスペクトルから、この星は太陽の9倍の質量を持つ主系列B型星で、若い星であると考えられています。このタイプの星は、通常2000万年以上の寿命を持つことができません。


Brownらは、もともと近接した二重星と離れた三番目の星からなる三重星として、我々の天の川銀河の中心付近で生まれたのではないかと提案しています。そして、 三番目の星がブラックホールに捕まり、近接二重星が高速度星として放り出されたとしています。銀河系を飛び出したあと、二重星は片方(または両方)が膨張し、他方を飲み込み、合体して新しい一つの星として再生したというのです。このような星は球状星団の中にみられ、'blue straggler(青いはぐれ星)'として知られています。


チームは現在、銀河系の外に遠ざかりつつある他の四つの高速度星の起源の解明に取り組んでいます。

  • 'A Runaway Star Tells a Long Story', Sky and Telescope誌, 2010年11月号

宇宙戦艦ヤマトにそんな話がでてきたような。。。

    Updated: