チャンドラX線観測衛星の打ち上げ25周年を記念した25枚の画像 (NASA/SAO/CXC)

Figure 1: チャンドラX線観測衛星の打ち上げ25周年を記念した25枚の画像 (NASA/SAO/CXC)。左上から順に、カニ星雲、オリオン大星雲、Arp 120、NGC 6334、銀河中心領域、M16、Bat Shadow、NGC 7469、おとめ座銀河団、WR 124、G21.5-0.9、ケンタウルスA、カシオペアA、NGC3532、NGC 6872、Hb 5、Abell 2125、NGC3324、NGC 1365、MSH 15-52、Arp 220、木星、NGC 1850、MACS J0035、SN 1987A。(NASA/SAO/CXC)

チャンドラX線観測衛星打ち上げ25周年を記念した25枚の画像

チャンドラX線観測衛星の打ち上げから25周年を記念して、25枚の画像(Figure 1)が公開されました。 全ての画像にチャンドラにより得られたデータが使用されており、X線による宇宙探査の良いデモンストレーションになっています。

チャンドラとはSubrahmanyan Chandrasekhar (1910-1995)にちなんだ名前で、サンスクリット語で月を意味します。 Chandrasekhar(チャンドラセカール)は、星の構造と進化を研究した著名な天体物理学者で、1983年にノーベル物理学賞を受賞しています。

X線は透過力の高い電磁波で、非常に高温な天体や高エネルギー物理現象から放射されます。 爆発した星の残骸やブラックホール周辺に膠着する物質など、多くの興味深い領域が強いX線で輝いています。 星、銀河、そして、惑星もチャンドラで観測可能なX線を放射しています。

現在も、JWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)やIXPE(イメージングX線偏光測定エクスプローラー)などNASAの強力な望遠鏡のデータと共に、チャンドラのデータは利用され続けています。 例えば、昨年、JWSTと共に2つの最も遠方のブラックホールを発見し1, 2、IXPEと共にパルサーによって作られたX線星雲の調査において「幽霊のような宇宙の手の骨」を発見しています。 チャンドラによるX線データと、他の衛星や地上望遠鏡のデータを組み合わせることによって、宇宙の長年の謎の調査や難問の解明に挑む事ができます。

チャンドラX線観測衛星 (NASA/CXC)

Figure 2: チャンドラX線観測衛星 (NASA/CXC)

チャンドラは、1999年7月23日、スペースシャトル コロンビア号にて打ち上げられました(ミッションSTS-93)。 Eileen Collins(アイリーン・コリンズ)船長の指揮の下、地球からの距離が、9,660 kmから139,000 km(月までの距離の約3分の1)を通る楕円軌道に投入されました。 最も近い場合でも、ハッブル宇宙望遠鏡の高度の約20倍で、スペースシャトルによるメンテナンスは不可能です。 チャンドラは、NASAのメンテナンスなしで運用されている最も長いミッションです。

Riccardo GiacconiとHarvey Tananbaumが、将来チャンドラとなる提案を初めてNASAに行ったのは1976年でした。 その後、チャンドラは、ハッブル宇宙望遠鏡、コンプトンガンマ線望遠鏡3、および、スピッツァ望遠鏡3に続く、NASAのGreat Observatories(偉大な観測所)となりました。 Giacconiは、X線天体の発見に通ずる天体物理学に関する先駆的な貢献によって、2002年にノーベル物理学賞を受賞しています。

アメリカおよび全世界の700名以上の博士、3500名以上の学部生と大学院生、約1700名のポスドクと500名以上のPI(研究主任)が、チャンドラによる研究に関わっています。 チャンドラによる観測の需要は計画全体を通じて非常に高く、採択されたのは観測提案全体のわずか20%程度でした。 1万本以上の査読論文がチャンドラ衛星のデータを元に書かれ、約50万件の引用がなされており、NASAの最も生産性の高い天文ミッションの一つとなっています。

今回の新しい画像は、チャンドラが四半世紀で取得した約2万5千の観測より選ばれたものです。

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