ハッブル望遠鏡はこれまで発見されたなかで最も遠方にある銀河の撮影に成功しました。しかしながら、宇宙で最初の銀河を見るためには、もっと遠くを観測しなければなりません。

2009年5月、ハッブル宇宙望遠鏡に二つの新しいカメラが取り付けられ、より強力な望遠鏡となりました。そのうちのひとつがWFC3(Wide-Field Camera3)です。ハッブル望遠鏡の近赤外域の感度と視野を拡大し、遠方銀河の探査能力はこれまでの20倍に跳ね上がりました。

WFC3がその性能を発揮するのに、それほど時間はかかりませんでした。 カリフォルニア大学サンタクルス校のGarth IllingworthとRychard Bouwensらのチームは、WFC3を用いて非常に遠方の5つの銀河を発見しました。それらはビッグバンから6億年(赤方偏移8.5)たったころの銀河の進化に関する知見をもたらします。

これらの初期の銀河は、これまでに既知の天体の中で最も遠方にあると認定されたガンマ線バースト090423とほぼ同じ距離に位置しています。しかしながら、記録を破ることに興味があるわけではありません。あくまで、銀河がどのように形成され、今日みられるような巨大な星の集合体にまで成長するのかを理解したいのです。

遠方の銀河の研究は、天空の比較的空虚な領域を長時間撮影することによって行います。2004年、ハッブル望遠鏡を南天の「ろ座」の一角に向け500時間にも及ぶ長時間撮影が行れました。これがHubble Ultra-Deep Fieldです。その中には可視光で最も暗くて遠い銀河が含まれています。最近、同じ領域に対しWFC3での48時間の撮影が行われ、近赤外線までカバーできています。

Ultra-Deep Fieldや他の銀河サーベイから、宇宙の星形成の歴史が調査されています。それによると、星形成のピークは今から約100億年前(宇宙年齢の1/4)で、現在の15倍の割合で星が量産されていたと考えられています。さらに最初の星や銀河が誕生するころまで時間を遡れば、星形成の割合はゼロになるはずです。しかしながらWFC3の観測でも、星形成の割合は現在とほぼ同じというところにしか到達できていません。ハッブルの最新技術をもってしても、最初の銀河の誕生までを明らかにするにはいたっていないのです。

問題は二つあります。一つは最初の銀河はハッブルや既存の他の望遠鏡にとって暗すぎること。もう一つは、宇宙の膨張のため可視光がハッブルの近赤外での感度外にまで赤方偏移してしまうことです。そこで、NASAは宇宙で最初の銀河を観測するために、2014年の打ち上げを目指してJames Webb宇宙望遠鏡の開発を進めています。この望遠鏡はハッブルの2.4メートルを大きく上回る6.5メートルの口径をもち、大きく赤方偏移した宇宙で最初の銀河を捉えるために赤外線の観測に特化しています。
  • 'Finding the First Galaxies', Jonathan P. GARDNER, Sky & Telescope 2010年1月

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