夜空に輝く赤い星、巨星や超巨星と呼ばれる星々を拡大してみることができたなら、その姿はふつうの星とは大きくかけ離れたものでしょう。巨大であるが故にその表面での重力はかなり弱く、もはや自分自身を球の形に保つことができません。膨大な量のガスが放出され、放出されたガスは遠方からでも確認できるほど輝いており、宇宙との境界はぼやけて曖昧になっています。

地球に最も近い超巨星の一つが、オリオン座の一等星ベテルギウスです。約640光年の距離にあり、その視直径は55ミリ秒角で恒星としては太陽を除いて最も大きいものです。その直径を太陽系で比較すると、木星軌道に匹敵する大きさとなります。

その大きな視直径にもかかわらず、観測的に表面の様子を明らかにすることは難しく、1996年に公開されたハッブル宇宙望遠鏡による画像でも、星本体とその周辺の明るい部分と暗い部分の存在をかろうじて分解できている程度でした。


そのベテルギウスの表面が激しく荒れ狂い、脈動し、毎年地球と同じ重さ(ベテルギウス本体の6千分の一)のガスを放出していることが、最近の二つの研究グループの発表から明らかになりつつあります。

一つはチリのパラナルにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT(8.2メートル鏡4台)のうち一台を使用した観測結果によるもので、近赤外補償光学システムを使用して37ミリ秒角分解能を達成しています。高い分解能を生かしたイメージで、不規則な星の外縁部の様子を明らかになっています。


もう一つのグループは、9ミリ秒角分解能でのスペクトル観測から、ベテルギウスの大気が大きく上下にうねっていることを明らかにしました。この角分解能は口径48メートルに匹敵し、1.8メートル望遠鏡を複数台用いた干渉計によって達成できました。

さらに、元々ゆっくりとした不規則変光星と知られていたベテルギウスの直径は、1993年の時点と比較して15%程度小さくなっているという報告が、別のグループから出されています。

これらのことは、ベテルギウスの死が近いことを示しています。わずか数百万歳(?! 太陽の寿命は100億歳ですから)のベテルギウスは死にかけており、間もなく超新星爆発を起こしてその生涯を終えると考えられています。このような近傍で超新星爆発が起これば、地球から見れば壮大なイベントとなるに違いありません。


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