この週末は久しぶりの月の無い夜の晴れ間となりましたね。 20年来の付き合いになる10×70双眼鏡を引っ張りだして、近所の原っぱでしばし星空を眺めました。 星図を頼りに星を辿りながら天体を探すのは、釣りに似た楽しみがあります。
双眼鏡でも楽しめる天体として、北天で最も明るい球状星団の一つM13があります。 ヘラクレス座のη星とζ星を結ぶ線上のη星寄り1/3の所に位置しており、η星とζ星を二、三回行き来していると、星とは明らかに異なるぼーっとした塊が見つかります。 街灯が近くにある、あまり条件の良くない場所なのですが、自分の手で導入した満足感も手伝って、十分堪能できました。
春から夏に変わるこの季節、M13に限らず、りょうけん座のM3やへび座のM5など、明るい球状星団(Globular Cluster)が空を賑わせています。 銀河系の中心を取り囲む巨大なハローに存在しているため、銀河中心(射手座)の見える夏の南の空に近付くにつれて見えやすくなるのです。
球状星団は年齢が百億年を超える化石のような天体で、銀河系が形作られたのと同時期かそれ以前に生まれたと考えられています。 百光年足らずの領域に数十万個の星が詰め込まれており、星の密度は銀河円盤内の平均より数千倍大きくなっています。 星々は互いの重力で束縛されて球状になっているのです。
このような球状星団は現在の銀河系では形成されていません。 現在銀河系で生まれている星団は、重力で束縛されておらず、長い年月を経るとバラバラに散らばってしまう散開星団が主です。 そのため、球状星団がどのようにして生まれたのかを直接調べることはできません。 一方、お隣の大マゼラン星雲では、銀河系の球状星団よりスケールの大きなPopulous Clusterが生まれています。 マゼラン雲の観測から球状星団形成の秘密が明らかになるかもしれません。

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